さて、前回に続いて「全国通訳案内士」のお話から。
2018年(平成30年)の法改正に従い、全国通訳案内士の資格を持たない方でも有償で通訳案内業務を行うことが可能になりました。ですから、最近の受験者には、「教養のため」の方々も増えている気がします。しかし、当然、通訳案内業務をするときにこの名称があるかないかでは、信頼度は違うというもの。
筆記試験は1日がかりで行われ、①外国語が90分、こちらは10カ国語(英語、フランス語、スペイン語、ドイツ語、中国語、イタリア語、ポルトガル語、ロシア語、韓国語、タイ語)から選択です。そして②日本地理が30分、③日本歴史が30分、④産業・経済・政治及び文化に関する一般常識が20分、⑤通訳案内の実務が20分、という内容。なかなかのボリュームですよね。
知人によると、マークシート方式だったものの、かなり悩ませられる問題も多かったとのこと。「でもね、これは何とかなる。この後の口述試験が、なかなかの難敵なのよ」。
そうです。筆記試験に受かると、通訳内容の実務(通訳内容の現場で必要とされるコミュニケーションを図るための実践的な能力について、選択した外国語により判定)で口述試験が行われるのです。

口述試験はどのようなものか。聞いたところによると、「京都の清水寺をガイドする予定で訪ねたところ、その日は急なお休みでした。そのときの対応と、代案も含め、実際どのような行動をしますか」というようなものらしいんです。
これ、すごく難しいと思いませんか? 仮に英会話力があるとしても、まずは参加者へのお詫びとその施設に入れない理由をしっかり説明し納得してもらい、その場で次の観光場所を考えて決めるだけの知識と判断力、決断力が必要、もちろん時間配分を考えながら……と、パッと思いつくだけでも、こんなに対処せねばならないことがあります。
そうです。観光ガイドって、本当にやらねばならないことが多いんです。私が今、偉そうに言っているのは、これからお話していく「地域通訳案内士」も根本は同じだからです。
確かに、今までの自分の経験を考えてみても、国内・海外問わず、団体旅行(はとバス含む)、現地ツアー参加などで出会ったガイドさんは、わがままなお客さんに対応しながらも、全体のスケジュールを崩さないように、全員の希望を調整しながら動きつつ、何か突発的な出来事があればきちんと参加者に説明しながら、その場で代案を提案したりしていました。そしてもちろん、急遽変更となった場所のガイドもきっちり行い、最後はみなさんに満足してもらう。
私が実際に出会ったトラブル対処が上手いガイドさんは、お手洗いが修理中だったためすぐに近くの別の施設に連れていった人、観光施設が混んでいて時間が間に合いそうになかったので上手く“ショートカット”ガイドをした人、などでしょうか。
ということで私は、「全国通訳案内士はムリだわ」という思いしか抱けず、それでも通訳ガイド業務には興味があり、そんなときに「地域通訳案内士」を見つけたのです。いや、見つけてしまったのです!
私が調べたとき、全国でいくつかの地域の応募が出ていました。そのなかで鹿児島県のカリキュラムが、日程的にも受講・受験可能で、内容的にも面白そうだったんです。鹿児島大学が講義を行い、それを受ければ取得できるというのですから。けっして「地域通訳案内士」を下に見ていたわけではないんです。でもなんとなく、鹿児島旅行の気分で、受けることにしてしまったのです。
事前に提出する書類も、今どきホームページなどで調べながら行えば、なんとか作成できました。今考えればこの内容、ただの説明文に終始し、ダラダラ長く、まったくガイドとしての魅力的な説明にはなっていませんでした(この話はまたの機会に)。
そうしていよいよ授業の席に着いたとき。己の考えの浅はかさと英語力に愕然とし、地獄に落ちる気分になってしまったのです。

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