世界遺産と検定と旅と ②「行った気になる、イースター島」

 『行った気になる世界遺産』(ワニブックス)という書籍をご存知だろうか。大好きな俳優、鈴木亮平さんの著書が発売されたのはコロナ禍の2020年9月。海外旅行が世界中の人々にとって遠い夢物語になっていたあの時期、この本のタイトルは秀逸だと思ったし、カメレオン俳優で語学も堪能な鈴木さんは世界遺産好きでも有名で、その鈴木さんの初めてのエッセイならば……と見つけた瞬間、私が“ポチッ”としてしまうのは必然であった。ちなみに鈴木さんは世界遺産検定1級に合格し(2011年12月)、2024年4月からはテレビ番組『世界遺産』のナビゲーターを務めている。

 本が家に届いて封を開けた瞬間、鈴木さんの大きな背中のイラストが見えて、その目線の先にある石の壁を乗り越えたら大きな世界が広がっている感じが伝わってきて、なんだかワクワクした。ちなみに、文章だけでなくイラストもすべてご本人が書き下ろしたものだ。本の帯には「旅行記書きました。行ってないけど。」とある。そう、これは妄想の旅行記なのである。鈴木さんにはもともと妄想旅行の趣味があったらしい。素敵。鈴木さんは、単なる景勝地としてではなく、歴史的な背景やストーリが楽しめる世界遺産に魅力を感じているのだという。私も同じように感じてきた。

 ペラペラとめくりながら、まず確認したのは、私はこの本に紹介されているなかのいくつの世界遺産に行ったことがあるのかということ。紹介されているのは30の遺産。このなかで私が行ったことがあるのは7の遺産だった。これが多いのか少ないのかはさておき、そもそも鈴木さんご自身は行っていないわけで、それでもこんな楽しみ方があるのか、と思った次第。

考えてみれば、世界遺産検定もある意味、この本を書くようなものかもしれない。鈴木さんのような才能があるかどうかは別として、妄想爆発で勉強すれば、こんなに楽しいことはないはずだ。

たとえば、古代エジプトではすでにビール造りが行われていたことを高校時代に何かの本の“豆知識”の欄で知った私は、その時点では古代壁画のどこかに酔っ払いの絵が描かれていることを妄想的に楽しんでいた。自分で勝手に壁画を描いたこともある。大学になり、授業のなかでその壁画が本当にあると知ったときは(子どもの落書きのようだと思ってしまったけれど)、妄想が現実になった気がして嬉しかった。

話が脱線してしまった。要は、行ったにせよ、行ってないにせよ、これから行くにせよ、妄想のままになるにせよ、それは“自分の旅”なのであり、世界遺産検定を学べば“自分の旅”に付加価値が付くはずだ。というわけで、検定を受けると決めた私は、まずはAmazonで対策本を探すことにした。検索すると、ズラリと各級の公式テキストや問題集などが並ぶ。「これはまさに、検定ビジネスだ……」なんて感想もチラリと持ちながら、自信過剰だった私は、公式テキストはすっ飛ばして、1級・準1級・2級の過去問題を見てみることにした。これを見ればだいたいわかるだろうと思ってしまったのだ。それに、どれもこれも1000~3000円するのだから、できるだけお金をかけずに効率よく受かりたい私は、なかでもお安い過去問題集を“ポチッ”と選んでしまった。そして届いた薄い冊子を開いてみると文字がびっしり。久しぶりに見たまさに「問題集」なのである。

 軽く問題を解いてみたけれど……難しい!わからーん。考えが甘かった。ただの歴史好きではダメだ、きちんと勉強しよう、と思い直し、今度は気合いを入れ直して公式テキストをポチッと購入した。それでも、何のプライドからか、元来のセコさからか、3級から始めることにした。

『きほんを学ぶ世界遺産100 世界遺産検定3級公式テキスト』。私が学習した本の表紙は、イースター島のモアイ像だった。これはラパ・ヌイ国立公園として、1995年に世界文化遺産に登録されている。もちろん、行ったことはない。

さて、4級の問題集には50の世界遺産が紹介されている。それをすっ飛ばして始めた3級の問題集には100の世界遺産が紹介されており、懐かしい歴史の教科書のようで、日々の電車通勤のお供となったのである。

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