銭湯に行こう!~550円のパラダイス⑤『廣尾湯』後編。オシャレな街に“広尾魂”あり

 正統派「廣尾湯」。湯あみ処のモザイクタイル画はヨーロッパの湖畔の街の風景で、オシャレで可愛いのですが、なぜ正統派の富士山ではないのか……ちょっとWebで検索してみたところ、「日本各地の銭湯にみるレマン湖畔のスイス・アルプスに着想されたモザイク・風景画」という研究資料が出てきました。この時代に欧州の風景画を描くことが流行ったのかもしれません。正統派がちょっとしたアレンジ(流行)を加えることこそ“広尾魂”なのかもしれないと勝手に確信!

さて、湯舟は気泡風呂とジェットバスの2種類。こじんまりしていますが浴槽の中もタイル(水色と濃紺)で気持ちよく、立ちジェットバスは三方向から体を刺激してくれるタイプで、気泡風呂には浅めと深めの浴槽があります。井戸水をわかしたお湯の温度は41~42度程度。やや熱めですが、何だかくつろげます。ときどき「ゆず湯」「ラベンダー湯」「よもぎ湯」などのイベント日もあるようです。サウナ・水風呂はナシ。

 お湯を楽しんだ後、シンプルな脱衣所で着替えていると突然、ショートヘアのおばあちゃんに話しかけられました。「私、ずいぶん髪の毛切ったのよ。どうかしら? 似合う?」。ハイソな街にありますが、湯あみ処での会話はいたって庶民的。日常感あふれる内容にほっこりします。地元民だと思われたのも嬉しいですね。「とてもお似合いですよ」とシンプルに返答しました。

ふと見ると、昔の美容院でよく見かけたパーマをかけるときに頭の上にかぶせる機械が付いた鮮やかなオレンジ色のソファがあります。コインを入れる機械も付いているので、どうやらドライヤーのようです。今も使えるのかしら……。コーヒー牛乳やフルーツ牛乳も売っていて、こちらも正統派(しつこい……)。手が出そうになりましたが、今日のご褒美の一杯のためにグッと我慢です。

銭湯を出てすぐが広尾商店街、広尾散歩通りです。銭湯と同じく歴史ある商店街でとても落ち着いていい雰囲気。老舗から洒落たお店まで、夜の静けさの中にポツポツとともる看板や店内の灯りが、“ご褒美の一杯”へ私の心をいざないます。せっかくの広尾、今日は洋食にしようと決め少し歩いていると、メイン通りから一本入った道の突き当りに、カウンターだけのこじんまりしたお店を発見しました。この日は当初予定していた麻布十番の銭湯から歩いてやってきたので、すでに21時くらいになっています。深酒しないようにしなければ……。

少し緊張して扉を開けると、「どうぞ」の声。若いシェフと女優の小西真奈美さんに似た女性がカウンターの中にいます。1人で食事している方もいて、カジュアルで居心地のよいお店のようです。

 座って、この日のおススメが書いてある黒板を見ると、美味しそうな洋食のメニューが並んでいます。正統派メニューを少しアレンジした感じです。まずはビールとサラダとグラタンを注文しました。ワインといきたいところでしたが、最初の一杯は“泡系”が正統派。正統派の銭湯の後は正統派で、自分に乾杯です。

食事を待っている間、女性が話しかけてきました。おしゃべりができることもカウンターで食事する魅力ですよね。聞けばこのお店は、オープンしてあまり時間がたっていないこと、ランチもやっていること(大変!)、シェフと女性はご夫婦ではないこと(思い込みは怖い)、などがわかりました。家庭的だけれど家庭では作れない味わい深いグラタンをいただきながら、このお店にもきっと“広尾魂”があるのね、なんて独りごちる。グラスの白ワインを追加し、あっという間に時間が過ぎていきます。締めの食事はパスタと決めていました。正統派ボロネーゼを注文し、せっかくなのでグラスの赤ワインを追加……。気づけば終電を気にする時間になっているのでした。

 

記念すべき2枚目の「ふろコレ」(100円・税込み)。集めるつもりはないと言いながら結局、買ってしまうのです

最近はカフェが併設されているような街中のコインランドリーが流行っているようですが、こちらはあくまで正統派

(写真より断然美味しい!)締めのボロネーゼ。正統派メニューにイカを入れてアレンジ。“広尾魂”ここにあり、です

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