蒲田温泉の次はどこにしようかな、と考えていたとき、用事で通っている麻布十番で見かけた看板を思い出しました。「♨竹の湯」と温泉マークとともに「↑」の印が付いた道案内の看板が電柱に巻いてあったのです。調べてみると、こちらも蒲田温泉と同じく温泉銭湯。東京にある温泉銭湯44のうち、港区にはこの「竹の湯」1つだけしかないようです。“港区女子”もいるのかしら……。
さて、行くと決めた日にはまっしぐら。今回も会社をサッと出て、麻布十番駅に向かいました。芸能人も多く住むセレブな街とはいえ、古き良き商店街の名残がありホッとする街です。地下鉄の出口を出た瞬間、ふと「今日、竹の湯は営業しているのな」と嫌な思いがよぎったのです。この日は月曜日。こちらは「月曜からひとっ風呂浴びて気合いを入れるぞ」の気持ちだったのですが……。Webで検索したところ、「定休日 月曜・金曜」とのこと。まさにビンゴ!です。己のうっかりぶりに悲しくなります。「銭湯へ はやる熱さ抑え 営業日の確認」という当たり前の教訓を得ました。
気を取り直して、近所の銭湯を探します。一度心身に生まれた“銭湯浴”はなかなか消えないのです。便利な世のなか、携帯電話のGoogle mapで〝ぐぐる“と地図上に銭湯がバーッと出てきます。この際、温泉でなくても構いません。一番距離が近そうな銭湯をクリックすると、「廣尾湯」が出てきました。「広尾にも銭湯ってあるんだ……オシャレな街のイメージしかないけれど……」。でも、オシャレな街に行くこと自体、やっぱり心躍らせてくれるもの。携帯のマップには「営業中」まで出る親切ぶりで、念のためホームページでも営業時間内であることを確認します。今居る場所から20分と少し。公共交通機関も不便だし、冬の冷気も気持ちよいし、あったかい湯あみ前の午後7時のお散歩といきましょう。
高級住宅地の間を通って歩くので怖くはないのですが、大使館も多いからか人通りは少な目。仙台坂を上って、その後は南部坂を下って歩きます。この辺に東北の藩が存在したことから名付けられた名前のようです。そのうち右手に大きな森が現れます。有栖川宮記念公園です。東京には緑多い公園が多くて気持ちがいい。多様な植物や鳥などが静まり返っています。ドイツ大使館をすぎるとオシャレな街の空気が漂ってきます。一度来てみたかったインターナショナルスーパーマーケット・ナショナル麻布もありました。ここを過ぎて少し歩くと、広尾の中心「広尾橋」の交差点です。この交差点にある広尾ガーデンの斜め向かいあたりに「廣尾湯」はあるのです。交差点からすぐの商店街のビルの1階にお目当ての湯あみ処は突然現れました。
廣尾湯は、東京都渋谷区にある銭湯です。渋谷区には10の銭湯があります。温泉銭湯は笹塚に1つ(そのうち行かねば……)。地下鉄日比谷線広尾駅から徒歩約1分。めちゃくちゃ“駅近”です。創業は明確にはわからないそうで、大正~昭和初期というザックリした感じもまたよし。いずれにせよ100年越えです。現在の建物は1971年(昭和46年)に建て替えられたもので、それを2017年(平成29年)にリニューアルしたのだそうです。
さて、入口には木に黒い筆文字で「廣尾湯」。その下には紫色に白い筆文字の「廣尾湯」ののれん。しごく正統なたたずまいに好感を持ちます。入口からすでにのぞく下駄箱も整然として並んでおり、こちらも正統派です。靴を入れて木のカギを締めて番台に進み、そのカギと引き換えに料金を払うシステム。この日の番台には人のよさそうなおじさん(推定50代後半)がいて、代金を払ってさっそく女風呂のほうに入ります。番台の両脇、男女風呂の入口にはそれぞれ冬の富士山と赤い紅葉が描かれたのれんと、「湯」の文字と“風呂桶銭湯グッズ”と牛乳石鹸のロゴが描かれたのれんが掛かっています。まさに正統派。この日はしっかりタオルと石鹸(前回購入した残り)を入れた「マイ銭湯セット」を持参しましたので、そのままのれんをくぐります。脱衣所に入ると、とてもきれいで清潔。大きな柱が印象的。これは昔のまま使っているのでしょう。ロッカーもごく普通の正統派。ここまで“正統派”と何度言ってきたでしょう。なんだか脱いだ衣類をしっかり畳まないといけないような気がしてきます。
いよいよ本日の湯あみです。入浴は20時前。
湯あみ処に入ると、最初に目に入るのは、壁一面の大きなモザイクタイル画。男女の浴室にまたがってドーンとあります。しかも富士山ではなく、ヨーロッパの湖畔の街の風景。湖にはヨットが浮かび、湖畔にはいかにも欧州風の家々と大きな風車があり、遠くにはアルプスのような山がそびえています。メルヘンの世界です。男湯との仕切りの壁にも小さなモザイクタイル画があります(絵柄、忘れてしまいました……)。これらのモザイクタイルも外壁の茶色いタイルと合わせて1971年に造られたときのままだそう。
湯友は地元感が9割、シニア感が7割、混み具合は3割程度。まさに地元のオアシスなのです。(次回につづく)

100年越えの歴史を誇る銭湯。入口にいろいろな□(四角)がたくさんあるんです。なんだかシャキッとしますよね

番台のおじさんは3代目だったみたいです。黄色い風呂桶の底にもある味わい深い屋号の文字は2代目が書いたそうです

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