太陽に立ち向いて咲くのうぜんかづら 強き陽射しに花ごと散り落つ
あっという間に9月に入り、なんだか少し“秋の気配”が漂ってきた。それにしても今年の夏は、うだるような暑さがつづき、「熱中症で〇人運ばれた」というニュースを聞いていたかと思えば、次の週には「ゲリラ豪雨で〇〇が浸水」というニュースが流れ……いずれにせよ夏の風情はまったくない。
こういうときは母の短歌でも見返してみようと思い、便箋に書かれた“短歌メモ”を開いてみると、最初のページにある夏の歌がすぐに目に留まった。
そもそも「のうぜんかづら」を知らない。花の姿も思い浮かばない。でも、真夏に頑張って咲いている強さは受け取ることができた。さっそく“ググる”と、鮮やかなオレンジ色の、ハイビスカスのような花の画像が出てきた。
これはもちろん、見たことがある! 子どもの頃、道路と庭の仕切りに使われている網目状のフェンスに絡みつき、たくさんの花を咲かせていたようなイメージがある。なんだかたくましいイメージだ。
いくつかの解説を読むと、「盛夏の強い陽射しの下で咲く」「ラッパのようなフォルムで南国を思わせる」とある。
漢字で書くと「凌霄花(りょうしょうか)」、花や葉、根などを乾燥させたものは漢方でも使うらしい。英名は「トランペットクリーパー」「トランペットバイン」。クリーパーもバインも“つる植物”を意味するという。私のイメージどおり、やはり生育旺盛、放っておくと増えすぎてしまうようだ。
それにしても、夏に太陽に立ち向かっていく花といえば「ひまわり」なのではないか。明るく元気なイメージの一番人気の夏の花。私だって、ひまわり畑で写真を撮った経験くらいある。そういったポピュラーなものではなく、ノウゼンカズラを題材に選ぶあたりが母らしい。
ノウゼンカズラは花ごと散る。絶対にお見舞いの花束として持ってはいけない。確かに、私が見たノウゼンカズラも、たくさん咲いている花の下の地面に、ラッパ型の花がそのまま落ちていた。
タフで粘り強いが、去り際は一瞬で。もっと調べると、どうやら朝に開花して夕方にはそのまま丸ごと落ちる「一日花」のようだ。次から次へ咲くので長く咲いているように見えるが、個々の花は短命。
こういう感じをニヒルに笑い、歌の題材に選ぶ母を想像して、私もなんだか笑ってしまう。
母が仕事をしている姿をしっかりは見たことはないけれど、ノウゼンカズラのようだったのかもしれないな、と思う。ずっと仕事をしてきた私は、どんな姿で仕事をしているのだろう。セカンドライフに入る前にもう一度、ノウゼンカズラのように咲いて散るのも悪くはないかもしれない。
寝苦しき夜に咲きしジャスミンの 重き香が吾を悩ます
ジャスミンは、その香りのよさで、香水やお茶などに使われる。見た目も白い小さな可憐な花を咲かせるので(黄色い花もあるらしい)、“嫌われる”要素はあまりない花のように思える。
しかし、どんなに香しくても強すぎると“しつこさ”につながる。香水が強すぎる人には近寄りたくないように……。
真夏の寝苦しい夜をあまり感じなくなったのはいつからだろう。最近では、熱中症対策などもあり、クーラーをつけっぱなしで寝ることを推奨されるくらいだけれど、昔は窓を開けて風を入れたり、扇風機だってタイマーで切れるようにして寝ていた。クーラーのつけっぱなしは体に悪いと言われていたからだ。そもそも、“熱帯夜”が圧倒的に少なかった。
だから暑くて寝苦しい夜はよくあった。そんな夜にジャスミンの強い香りがしてきたら……確かにもっと寝られなくなりそうだ。
ジャスミン(白)の花言葉は「愛らしさ」「優美」「温和」「従順」。古い価値観で言うならば、男性に好かれそうな女性。でも、真夏の夜に強い香りを放ち、安眠を妨げるジャスミンは、なんだか女性の“裏の顔”を覗くようだ。
クーラーのなかで寝ていても、その香りは安眠を邪魔してくるのだろうか。いや、温度も湿度も密室状態でコントロールできる夜には、裏の顔なんて見せられないのかもしれない。


ノウゼンカズラの写真がなかったので、沖縄のハイビスカスと実家のモッコウバラを。ハイビスカスはパッと明るく元気をもらえるけれどこちらも「一日花」。モッコウバラは一日花ではないけれど、花がそのまま落ちるのは同じです


甘い香りを放つジャスミン。この香りには、糞尿に近いとされる成分も含まれているのだとか。“重い“と感じるのもあたりまえです

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