今回からは鹿児島県の「地域通訳案内士」にチャレンジしたお話をしていきます。
この資格を取得するためには鹿児島大学でのカリキュラムを受講する必要があります。事前に説明会が開かれ、こちらに参加する必要がありました。本受講の約半年前です。本業の仕事の九州出張に合わせられそうな日を選んで参加し、内容を聞いてみることにしました。
場所は実際に講義が行われる鹿児島大学にて。大学に足を踏み入れることなど久しぶりなので何だか緊張します。広いキャンパスに少し迷いながら指示された教室を探していくと、何とか見つかりました。
部屋にはすでに男性2人、女性1人の3人がいました。おどおどしながら私も椅子に座り待っていると、長めのグレーヘアを後ろで結った、濃い顔の男性が入ってきました。そのエスニックな顔立ちと雰囲気を見て、「薩摩隼人だ!」と……鹿児島大学の教授で、本カリキュラムを取りまとめている方でした。
さて、講義の内容についての説明を受けます。2週にわたる計3日間で、大学の「総合講義(鹿児島における世界文化遺産)」を受講することが資格取得の条件です。配られた紙に講義内容が書かれていて単純に面白そう。「世界文化遺産の概要」「明治日本の産業革命遺産について」など、歴史好き、世界遺産好きにはたまらないものから、「救命救急」「鹿児島の観光の概要」「ホスピタリティ」など興味をそそられるものまで。最終日には「旅程管理」「実務研修・まとめ(模擬ツアー実習)」を鹿児島の観光名所「仙厳園」で行うとあります。昔、「磯公園」と呼ばれていた頃、家族みんなで旅行したなあとぼんやり思ったりしました。
私は受講を決めました。この時点ではあまり深く考えてはおらず、カルチャースクールで趣味の講座を受ける程度の感覚だったのだと思います。
そこから応募に必要な書類、大学の卒業証明書、成績証明書(久しぶりに母校に行くことになり、これ自体も緊張しました。過去の自分の成績を見て恥ずかしくもなりました)、履歴書、志望動機書を提出し、あとは講義を待つばかり。最初はワクワクしていましたが、日々の生活に追われて、実はすっかり忘れてしまっていたのです。
約3カ月後、学生証と大学の学習システムを見ることができるIDが郵送されてきて、「大学生になるんだ!」と再びワクワクします。実はそこには膨大な「鹿児島の世界遺産」についての資料も同封されていたのですが、それはとりあえず部屋の片隅へ……。
そうして秋も深まる頃、説明会のときにお会いした先生からメールが来ました。そこには最終カリキュラムの詳細と、事前に提出すべき「宿題」について書かれているではありませんか。
1つ目は、「受講生報告」の授業のための発表資料。各自、与えられた課題に関するプレゼン資料を準備し、当日に発表せねばならないようなのです。私の課題は、鹿児島県を外国人観光客にアピールするためのもので、そのなかでも「鹿児島県の名所」について。パワーポイントを使って英語で作成しなければなりません。
2つ目は、事前に決められているグループワークでの発表で担当しないエリアについて、(ガイドの)案内ポイントとなる点を各場所3点~8点書き出して英語で箇条書きにして説明したものを作成することです。
旅好き、世界遺産好きを自認する私は、正直「この課題ならばラッキー」と思い、自分を過信してしまったのです。提出期限は約1カ月後。宿題の類はギリギリで提出してきた人間です。人ってそうそう変わらない。締め切り間際までしっかり放置してしまいました。
さて、我々が学ぶ鹿児島の世界遺産は「世界文化遺産」として登録された「明治日本の産業革命遺産」の一部を構成しているものです。2015年に、幕末から明治期までの日本の産業化を示す8県11市に存在する23の資産がまとめて登録されたのです。ちなみに、鹿児島には2つの「世界自然遺産」もあり、1つは1993年に登録された「屋久島」、もう1つは2021年に登録された「奄美大島、徳之島」(沖縄島北部・西表島と合わせて登録)です。
鹿児島といえば島津藩。島津斉彬、天璋院篤姫、西郷隆盛、大久保利通など、明治維新の前後に日本の近代史に燦然と輝く多くの偉人たちを輩出しています。数々の小説や映像にもなってきましたが、近年で言えば印象深い大河ドラマが2つ。宮崎あおいさんが可愛くも気高い篤姫を演じた『篤姫』や、七変化の鈴木亮平さんが西郷を演じた『西郷どん』がありましたね。鹿児島の世界文化遺産にも、この偉人達は関わっています。私が目指した資格は、外国人旅行者にこれらをわかりやすく英語で説明し伝えなければならない「通訳ガイド」です。ただ自分がワクワクしている場合ではなかったのです。

手書きの応募書類。ポストに投函するときに、2回手を叩いて祈ってしまうのは習性でしょうか

説明会のときに立ち寄った「仙厳園」から見えた桜島。この後、何度も元気とパワーをもらうことになります

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